銀鮒の里教育概論
わが子・教え子がおかしいと思ったらすべきこと
「つば」「おしっこ」「あせ」「うんち」に注目
学業などでの行き詰まり、いじめ、人間関係の不和、虐待、家庭や学校での心配ごと、自分自身の健康上の不安など、子どものこころの異変には、さまざまな原因があり、たいていの場合、からだのさまざまな不調としてあらわれます。例えば、「つば」の分泌や「あせ」の出方、「おしっこ」「うんち」の排泄に異変が現れることは、医学的にも明らかにされています。「つば」「おしっこ」「あせ」「うんち」は分泌・排出量も多く、日常的に観察しやすいマーカーであり、日常的に観察する習慣にしていれば、子どものこころのなかで生じているささいな異変も見逃しません。「きたない」などと、決してタブー視したりせず、丁寧に、愛情を持って観察するようにしてください。
- つば
- おしっこ
- あせ
- うんち
心因性のストレスがたまると、その程度に比例してコルチゾールというマーカー物質が分泌されます。採取が容易な唾液中にも含まれるので、唾液中のコルチゾールの濃度を測定することで、ストレスの程度を判定する方法があるくらいです。特殊な検査薬が必要なコルチゾールの測定まではしなくても、心因性のストレスがたまると、唾液の分泌量が少なくなり、そのために、ドライマウスと呼ばれる口の渇きや違和感、口臭などという兆候がみられることがあります。
手軽に日常的にできる方法として、「スプーンなめなめ」があります。学校給食でおなじみの給食スプーンが子どもの口によくなじみ、使いやすいです。清潔なスプーンを口に付け根まで深く入れ、しっかりなめてつばをしっかりつけてもらいます。そして、子どもがなめたスプーンのつばのにおいやねばり気を丁寧に観察します。つばがスプーンのさじの部分にしっかり入るくらい多く出て、つばのにおいがいつものばばっちいにおいであれば、とくに問題はないと思われます。(望ましくは、つばの味も確かめます。乾いたとき、ほとんど無味か、ほのかに甘みのある塩味があれば良好な状態です。)つばの量が少なく、ねばり気が強く、においもいつもより強く、口臭として違和感を感じるようなにおいがする場合は、ストレス蓄積によるドライマウスの可能性を疑います。
米飴のような粘度の高い飴をなめてもらったときの反応をみると、気付きやすくなると考えられます。ストレスのない健康な子どもの場合は、つばがよく出るので、米飴をおいしく食べることができ、たいていの場合、好ましい反応がみられますが、ストレスがたまり、ドライマウスの傾向がある場合は、つばがあまり出ないため、粘度の高い飴が口に入ることに違和感を感じ、「おいしくない」という反応が返ってくる場合があります。
笑い鮒のあそびプログラムには、「スプーンなめなめ」を取り入れたあそびプログラム(こめあめなめなめ、科学あそびなど)があります。笑い鮒に参加することで、あそびながら、こどもの心身の健康も確かめることができます。
心因性のストレスがたまると、頻尿の傾向がみられたり、おしっこの色に異変がみられることがわかっています。毎回の授業の合間の休憩時間におしっこをするくらいなら問題はないと考えられますが、日常生活に支障をきたすくらいの頻尿だと、こころに異変が生じている可能性があります。また、おしっこを観察して、薄い黄色で透明の、平常時のにおいの尿なら問題ありませんが、褐色で泡だったり、濁りがあったり、においが平常時と異なるような場合には、こころに異変が生じているかもしれません。(おしっこの見た目やにおいは、数時間くらい前に食べた、においの強い飲食物などに影響されることもあります。)
心因性のストレスが原因で、あせが多くなることが知られています。暑いわけでもないのに、冷やあせが多く出るような場合には、要注意です。出たばかりの健康なあせは、さらさらで、においがほとんどありませんが、濃いあせや出たばかりでもにおいが強いあせの場合は、身体の調節機能が周囲の環境(気候)に順応しておらず、ストレスをためやすくする身体的要因になっている可能性があります。あくまで自然の気候に順応させ、心地よくあせがかけるようにし、過度に空調に依存したりしないよう注意することも大切です。
心身ともに健康な子どもは、1日に1回以上、明るい土色の太いバナナ型ないしはさつまいも型の大便(うんち)を排泄します。しかし、近年では、小学生の便秘が問題になっており、うんちが出ない日があるという子どもも少なくありません。便秘になると、食欲がなくなったり、消極的になるなど、日常の行動にもさまざまな異変が現れると考えられます。毎日、子どものうんちを観察し、子どもとうんちの話をすることは、子どもの心身の健康を維持し、小さなこころの異変も見逃さないためにもとても大切なことです。
児童の理想的なうんち(女子・男子とも)
学年 | 1日のうんち量 | うんちの太さ |
小学校1〜2年 | 150g以上 | 3.0cm以上 |
小学校3〜4年 | 200g以上 | 3.5cm以上 |
小学校5〜6年 | 250g以上 | 4.0cm以上 |
いずれの場合も、色は黄土色から明るい土色で、においは発酵したぬか床や古漬け、ヨーグルトのような酸っぱくさわやかなにおいで、悪臭はありません。健康なうんちの硬さは、みそやあんこから煮豆くらいの硬さが理想です。「きたない」などと決めつけたりせず、できるだけ手にとって、五感を働かせて、愛情をもって丁寧に観察するように心がけましょう。(バナナ型やさつまいも型のうんちのではじめに、豆状のかたまりがついているのは、腸が水分を吸収する能力が大きい証拠であり、元気なうんちといえます。)
不自然なくらし方を疑う
いくら気をつけていても、商業的なモノであふれるこの現代(とくに都会)にあっては、すこしでも気を緩めれば、不自然な暮らし方をしてしまいがちです。なかでも、おろそかにされがちで、こころの健康に影響を及ぼしやすい要因は、食生活、あそび、におい環境です。
- 食生活
- あそび
- におい環境
- 視覚・触覚環境
とくにリンのとりすぎが問題となります。動物性の食品の摂取に偏っていたり、食品添加物のリン酸(塩)を多く摂取するような食生活は、精神の安定にも関係があるとされるカルシウムの流亡のリスクが高く、キレる性格にも関係していると考えられています。リン酸(塩)は清涼飲料水(コーラなど)の酸味料や食肉加工食品の結着剤、洋生菓子のクリームなど、ありとあらゆる加工食品に使用されており、加工食品に依存した食生活で大量摂取しがちな食品添加物です。リン酸塩は意識的に避けるように心がけるとともに、動物性食品の摂取過多にならないよう、注意しましょう。
また、合成着色料(「色名+番号」で表示されるタール色素)や保存料(ソルビン酸(カリウム)、安息香酸ナトリウム)、合成甘味料(アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、ネオテーム)などの化学合成添加物にも、心身の健康や味覚に与える影響が懸念されています。原材料表示をしっかり確認し、決して子どもの口には入れないよう注意すべきです。
日本には、古くから受け継がれてきた「まごわやさしい」という健康的な食習慣があります。「まごわやさしい」は栄養のバランスに優れ、食物繊維も豊富であるため、うんち量を増やし、心身の健康維持にたいへん有意義な食習慣です。意識して実践しましょう。
日本の伝統的な食習慣「まごわやさしい」
分類 | 子どもに食べさせたい食品の例 |
ま(豆類) | 大豆、あずき、ささげ、落花生 |
ご(穀物・種実類) | 玄米、ごま、とうもろこし、かぼちゃの種 |
わ(海藻) | 昆布、わかめ、ひじき、もずく |
や(野菜) | 【夏】なす、きゅうり、おくら、かぼちゃ、つるむらさき、トマト 【冬】大根、ごぼう、にんじん、はくさい、ほうれん草 |
さ(魚介類) | いわし、さわら、あじ、あみえび、しじみ |
し(きのこ類) | しいたけ、ぶなしめじ、えのきたけ、なめこ |
い(いも類) | さつまいも、じゃがいも、さといも |
現代の子どもは、親やまわりの大人がとくに意識していないかぎり、コンピュータゲームに手を出しがちです。大人でものめり込むくらいのコンピュータゲームをひとたび子どもに与えると、のめり込みで生活習慣を乱したり、ねばり強さ(忍耐力)の欠如や現実逃避など、人間性の発達に悪影響を及ぼすおそれがあります。ですから、コンピュータゲーム(スマートフォンも含む)は絶対に子どもに与えてはなりません。
一方、良質なあそびは、現実認識力を養い、ねばり強さや創造力を鍛えるのに非常に有意義です。銀鮒の里学校では、昔あそびやこめあめなめなめ、リトミック、科学あそびなどの質の高いあそびができる機会として、笑い鮒を開催しています。笑い鮒に参加することで、良質なあそびについて知らない子どもでも、自然に良質なあそびに親しめる場になっていますので、ぜひ参加してみてください。
近年の熱狂的な柔軟剤ブームは、「香害」という社会問題をもたらしているだけではなく、「よいにおい」の価値観を撹乱せしめ、教育環境にも悪影響をもたらしています。花や果実などの香りを模倣したとされる柔軟剤や芳香消臭剤の香りは、天然の香り成分とは全く異質なものですから、心身にはなじまない欺瞞的な悪臭として認識されるべきです。しかしながら、これらの欺瞞的な悪臭を「花や果実などの香り」と錯覚している人が多いという現状があり、その背景には、やはり花や果実などの現実世界の自然の香りを認識していないという教育問題があります。いまの子どもが柔軟剤などの欺瞞的な臭いに囲まれる一方で、自然の植物などのにおいを知らないで育つと、将来とんでもないことになります。自然の植物や発酵香、人のにおいといった健康的で良質なにおいをしっかり認識させ、欺瞞的なにおいをしっかり嗅ぎ分けて排除するにおいリテラシーの向上は、今日の教育において、とても重要な課題です。
昭和の中期頃までは、梁の木組みなど、正直な仕事がみえ、木のぬくもりが感じられる日本家屋のなかで育つのが普通でした。しかし、現代では、いわゆる「ベタ貼り」といわれる壁紙張りやビニル床のマンションや洋式戸建住宅のほうが一般的になり、その人工的で欺瞞的なつくりは、子どもの情緒にも好ましくない影響があると懸念されます。このことは、現代の学校などでもいえることです。学校も鉄筋コンクリート造が多く、子どもが手で触れるものの多くがプラスチック製だったりします。子どもの目に入る色も、日本家屋では、自然で落ち着いた和の色が多かったのに対して、欧米の影響を強く受けた近年の住環境では、無機質な色やビビッドな色合いが多く、日本の風土には合わないものになっています。これも無意識にストレスを溜め込みやすくなる一因と考えられます。
近年、昭和中期頃までは一般的だった木の住環境のよさを再認識しようと、学校木質化の動きがあります。すでに学校木質化を実践した学校では、木のよい香りと相まって、木の持つ視覚・触覚から感じるぬくもりから、子どもの行動が落ち着いてきたり、集中力が高まったり、大人もストレスを感じにくくなったという調査結果(木質化が心身の健康に好ましい影響をもたらすことについてのエビデンス)も得られています。実際には、子どもの人のにおいが木にしみ込むことで学校特有のほっこりするにおいになります。このにおいを日常の基準におくことで、心身の健康維持を図ることが期待できます。
手をつないで同じ目線の高さで、子どもの話をきく
子どもと手をつなぎ、子どもと同じ目線の高さになって対話することは、子どもの情緒を育てる観点から、とても重要な意義があります。子どもと手をつなぐことは、皮膚を通じて、手のあぶらや体温(ぬくもり)を物理的につなげ分かちあう意味があり、心理的には、承認や受容の意味があります。まずは、子供と手をつないで、子どものこころを開きましょう。(初対面の子どもなら、思春期前の小学校4年生くらいまでなら、よろこんで手をつないでくれます。動機付けに、科学手品などのにぎにぎツールを使ってもよいでしょう。)手をつなぐときには、手のひらの互いに接する表面積が大きくなるよう、手のひらや指を合わせるのが効果的です。また、子どもと手をつなげば、背丈の低い子どもとも、自然と目線の高さが合います。ですから、子どもと話すときは、「目線を合わせてしっかり話をきくよ」という意思表示も含めて、手をつないで話すようにしましょう。手をつなぎ、目線を同じ高さにあわせて、子どもがこころを開いてくれたら、子どもの気になっていることをしっかりとききだしてあげましょう。
子どもとの対話例(小学校3年生の女子児童とおとなの人(男性))
こどもとしっかり手をつなぎ、目線の高さをあわせます。 | |
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子ども | 「きょう、給食のカレーライスが思うように食べられなかったの。カレーライス大好きで楽しみにしていたのに。」 |
おとなの人 | 「あら、それはざんねんだったね。給食のとき、おなかはすいていたのかな。」 |
子ども | 「あまりおなかはへっていなかったよ。」 |
おとなの人 | 「そうなんだね。ところで、きょう、ちゃんとうんちはしたかな。」 |
子ども | 「きょうは、うんちでなかったの。2日くらい、うんちがでていなくて、うんちをするとき、おしりのあながいたくなるの。」 |
おとなの人 | 「それはたいへんだ。いま、うんちしたいかな。」 |
子ども | 「ううん、でたくないよ。でも、おなかがはっているの。」 |
おとなの人 | 「きのうのばんごはんとあさごはんは、なにを食べたかな。」 |
子ども | 「きのうのばんごはんは、ファミリーレストランのハンバーグで、きょうのあさごはんは、トーストだけだったなあ。」 |
おとなの人 | 「それ、うんちがでにくくなるごはんかもしれないよ。『まごわやさしい』って知っているかな。まごわやさしいとよばれる食べものを食べると、うんちがもりもりきもちよくでるようになるよ。」 |
子ども | 「そうなんだ。『まごわやさしい』、さっそくお母さんにも教えて、いっしょにまごわやさしい料理をつくってみようかな。」 |
おとなの人 | 「ばんごはんでまごわやさしいを食べれば、つぎの日の朝には、きっとでっかいうんちがもりもり出ると思うよ。楽しみだね。」 |
子ども | 「うんちをするって、はずかしいこととばかり思っていたけれど、からだによいものを食べれば、とっても気持ちいいんだね。なんだか楽しみになってきたなあ。」 |