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商業主義問題と市民感覚

市民感覚とはなにか

市民感覚とは、資本主義的論理などに左右されることなく、市民が社会に対して本能的もしくは理性的に本来希求する感覚のことと定義されます。

市民感覚には、地域共通の広汎的普遍性(Extensive Universality;EU)要素と、地域に根ざした文化に依存する地域的普遍性(Regional Universality;RU)要素とを持ち合わせています。わが国日本においては、EU要素を前提としたうえで、EU要素の一部に内包されるRU要素の両方を考慮したESDの展開が重要となります。具体的には、下表のようになります。

市民感覚の例
広汎的普遍性(EU) 地域的普遍性(日本)(RU)
非営利市民セクター(協同組合・NPO/NGO等)の黙示的対社会希求(コモン・センス) 左記対社会希求のうち、日本の文化・風土に特質的な対社会希求
安全で安心できる食べ物を食べたい(食べさせたい)
  • 不要な食品添加物を添加しない
  • 環境や健康に悪影響を及ぼすおそれがある化学物質(農薬・動物用医薬品など)を生産・流通時に使用しない
  • 遺伝子組み換え原材料を使用しない
  • 動物福祉(卵用鶏の平飼いなど)や食品生産における市民的善良慣行(グッドプラクティス;牛乳の低温殺菌など)に配慮した生産方法

国産食材の消費拡大の取り組み(国産米・国産小麦など)→自給率向上・食品安全の確保・化学物質による環境リスクの低減・遺伝子組み換え混入対策

野菜などの地産地消・フードマイレージ縮小の取り組み

不必要に環境負荷をかける洗剤を使用しない 合成洗剤を使用せず、石けんを使用する(石けん使用運動)←軟水に恵まれた日本の水環境事情
原子力発電を根絶したうえで、地球温暖化の原因となる化石燃料による発電方法から再生可能エネルギーによる発電方法へ移行するエネルギーシフト 左記を満たす日本の現状に即した発電方法(太陽光・小水力・潮汐力・風力・地熱・バイオマスなど)へのシフト
伝統建築様式の建造物への居住(学校などを含む) 左記を満たす日本式木造建築の建造物への居住(学校などを含む→学校木質化)
教育有害施設(風俗営業施設・賭博場)の根絶 教育有害施設(風俗営業施設(ゲームセンターなど)、賭博場(パチンコ・場外賭博券場など))の根絶
タバコ・有害薬物の根絶 左記に準ずる(タバコ規制枠組み条約(FCTC)批准を根拠にした世界的協調)
持続可能性(高い耐久性など)を意識した構造・デザインの製品の日常的活用

左記に準ずる

とくに日本各地の工芸品

季節の自然(動植物)や自然と調和した原風景や文化に親しむ気持ち(こころのふるさと) 左記を満たす、日本の自然やそれに根ざした文化に親しむ気持ち(日本固有のものを基本とするが、日本の文化的背景に調和した帰化文化(日本式洋館・海外唱歌の日本語版や園芸植物など)も含む)

資本主義的論理に基づく市民的要求の棄却根拠として、「採算が合わない」「歩留まりが悪い」ということがしばしば問題になりますが、先に定義したとおり、これらの棄却根拠は、市民感覚とは必ずしも相容れません。例えば、国産無垢材を活用した伝統工法による小学校校舎の木質化改築の市民要求があるとします。このような市民要求は、資本主義的論理によって棄却される(実際には、しばしば棄却判断者の先入観に起因する誤解を伴う)ことがあります。しかし、子どもの健全な情緒を育む教育環境を希求する市民感覚を実現に導くべく、削減可能な費用を削減したり、市民の間で訴求広報や学びの場を設けたり、財政的支援(カンパ)を募ったりする工夫や努力によって、実現に導くことが可能です。そのような、困難にも屈しない、地道で根気強い取り組みこそが、市民感覚に基づく市民運動です。