商業主義問題と市民感覚
学校給食にみる市民感覚
日本の学校給食は、敗戦後にアメリカからの学校給食用援助物資(ララ物資)の供給を受けてきたり、アメリカの余剰小麦のはけ口として利用されたした関係で、学校教育のなかでも、アメリカの影響をとくに色濃く受けてきたといえます。その名残が、現在でも一般化している「栄養剤(ビタミンB1・ビタミンB2、L-リジン)入りのパン+牛乳」という、アメリカ型栄養学的合理主義に基づく組み合わせです。当然、このようなアメリカの論理を無理やり日本の教育現場に押し付けられ続けたわけですから、市民による強い反動は当然あるわけで、その反動が「米飯給食」の取り戻し運動や、「牛乳廃止論」です。
子どもの小さい口で食べさせて、子どものからだや元気になっていくものですから、大人以上に、最大限に安全で安心できる、正しい食習慣を身につけさせることのできる食べ物を食べさせてあげたいと願うのが、学校給食に対する当然の市民感覚です。それは、不要な食品添加物を使わないということであったり、食器などの洗浄に、合成洗剤ではなく、安全な石けんを使うという配慮に現れています。とくに、「不要な食品添加物は使わない」という文言は、文部科学省の学校給食衛生管理基準にも明文化されています。例えば、食品スーパーなどで一般向けに販売されるハムやベーコン、ソーセージには、多くの場合、発色剤として亜硝酸ナトリウムなどが、保存料としてソルビン酸が、調味料としてL-グルタミン酸ナトリウム(「アミノ酸」と表示)が添加されていたりしますが、学校給食仕様のこれらの食肉加工品は、これらの指定添加物は添加されていない無塩せき品になっています。
しかし、その一方で、アメリカナイゼーションに起因する、市民感覚に逆行する動きが、長年にわたり慣行化していることもあります。それは、学校給食残飯の廃棄処分です。とくに、病原性大腸菌O-157による集団食中毒事故が複数の学校給食現場で発生し、岡山県邑久町(現在の瀬戸内市)と大阪府堺市で死亡者が出たことから、このことで誇張的に報道されたこともあり、全国的なパニックが起こりました。これがきっかけになって、文部科学省の学校給食衛生管理基準でも、「残食は、衛生上の観点から、廃棄することが望ましい」と明文化されたこともあり、これまで比較的寛容だった学校給食の持ち帰りが必要以上に厳格に禁止されるようになりました。そこで、「調理後2時間に喫食すべき」「調理後2時間を経過したら無条件で廃棄」という基準が、全国の多くの学校給食の現場で運用されるようになりました。これは、やはり以前からアメリカ発祥のマクドナルドで運用されていた一定時間経過後廃棄ルールと、汚染疑義食品(加熱不十分のハンバーガーパティ(牛肉))を日常的に取り扱うハンバーガー店でも病原性大腸菌O-157を原因とする食中毒が頻発したことによる影響ともいわれています。しかし、学校給食の残飯で、病原性大腸菌O-157などの病原菌による汚染問題が起こる懸念は実際にはほとんどなく、適切に取り扱ええば、持ち帰りも全く問題ありません。給食終了後、学校の給食室の冷蔵庫で急速冷却し、「持ち帰りは自己責任で」という条件を付帯すれば、何ら問題がないことです。
(マクドナルドの一定時間経過後廃棄ルールの問題については、米国マクドナルド社侵略的進出の負のケーススタディもご参照ください。)