ホーム > 銀鮒の里教育情報 > 銀鮒の里教育概論 > 商業主義問題と市民感覚 > 学校給食にみる市民感覚

商業主義問題と市民感覚

豊能郡ダイオキシン問題の本質

1996年、大阪府の最北部に位置する豊能郡能勢町・豊能町を処理対象区域とする豊能郡美化センター(ごみ焼却施設;能勢町(※現在停止中))周辺において、国内最悪といわれるダイオキシン汚染問題が発生しました。しかし、その根本原因については、マスコミなどでは追及されることはなく、多くの市民は、その根本原因を知る機会を与えられることはほとんどありませんでした。

市民派の環境化学者は、そろってこのように答えます。

その最大の原因は、「食品ラップフィルムなどに使われる塩素系樹脂(ポリ塩化ビニル・ポリ塩化ビニリデン)の焼却である」と。

それにもかかわらず、豊中市をはじめとする豊能地域の自治体では、当然行うべき塩素系樹脂規制を行うことはありませんでした。それどころか、市民には、「食品用ラップフィルムやその他「プラ」マークのない塩素系樹脂製品は『燃やすごみ』として出すように」と指示したのです。焼却炉の温度が高いので問題ないとの解釈ですが、これは、技術過信に基づくものであり、市民の環境モラル意識を堕落させかねない愚策であることはいうまでもありません。塩素系樹脂は難燃性の特性から炉の温度を下げる性質があり、それに逆らって炉の温度を上げるために重油などの燃料が投入され、それに伴う温室効果ガス(二酸化炭素)の増加の問題もあります。

化学物質のリスクコミュニケーションの取り組みがほとんど行われていないこと、それは、関西地域の環境活動の決定的な問題点です。関東地方では市や都県などの行政レベルで推進されている事例も少なくありません。市民と行政との間でリスクコミュニケーションの取り組みが行われていれば、とくに食品ラップなどのワンウェイ塩素系樹脂製品の使用を条例で規制するなどの有効な予防的施策を講じることができたはずです。このままでは、有害化学物質に対する市民の不安が払拭されることもありませんし、もしくは、有害化学物質による環境汚染に対する関心が持たれないまま放置され、また新たな問題が発生するというモラルハザードも避けられません。

今日の日常生活には、塩素系樹脂のほかにも、合成界面活性剤を含む合成洗剤など、環境汚染を引き起こすおそれのある化学製品がたくさんありますが、それらは、塩素系樹脂ラップからポリエチレンラップに、合成洗剤から石けんに、といったように、多くの場合、安全性の高い代替品に代えることで、環境汚染を未然に防止することができます。そのような取り組みは、一部の生活協同組合の組合員活動などで行われてきましたが、断片的なものであり、行政や市民をつなげる行動には結びついていません。

とくに関西地域でのESDの取り組みでは、リスクコミュニケーションの取り組みで行政や市民をつなげるしくみづくりが喫緊の課題であるといえます。