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商業主義問題と市民感覚

米国P&G社侵略的進出の負のケーススタディ

全世界では消費財最大手、いまや日本でも消費財大手の3本の指に入るといわれるプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)社(日本法人:プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社)の日本における歴史は、マクドナルドとほぼ同時期の1972年(昭和47年)に始まります。その歴史は、日本における水環境の生物多様性の破壊と消費者問題の歴史といえるものです。

1963年に、合成洗剤の生産量は、石けんの生産量を逆転しました。合成洗剤メーカーによる過激な宣伝活動によって、合成洗剤を「画期的で優れた洗剤」と盲信させたことによる現象です。その頃、全国各地では、河川の泡立ち現象が大きな社会問題となり、水質汚濁による生態系の破壊も進行しました。当然、全国各地で合成洗剤反対運動が活発に展開されてきましたが、量販店には派手なパッケージの合成洗剤が山積みされ、買い物客集客の目玉商品として低廉な価格で販売され、合成洗剤業界による欺瞞に満ちた販促活動はますます挑発的度合いを増してきました。そんな折に、P&Gの日本法人は、1969年にミツワ石鹸(廃業)・第一工業製薬・旭電化工業(現:ADEKA)の合同出資により設立された日本サンホームを前身とし、3年後の1972年にアメリカのP&G社が日本サンホームを買収し、伊藤忠商事が資本参加するかたちで、大阪市東区(現在の大阪市中央区)にて創業されました。 創業当初から、テレビでの反復宣伝や量販店での山積みといった派手な宣伝広告戦略で、競合の花王・ライオンと肩を並べ、市民の洗脳工作や学会における合成洗剤有害論の否定や市民運動潰しに終始しています。さらに、1996年には、日本生活協同組合連合会(以下、日生協)が「石けん運動は科学的に疑問がある」という方針に転換したことにより、コープこうべ(現在のP&G本社と同じ神戸市東灘区に本部が所在)をはじめとする日生協直系の単協で、P&Gをはじめとする合成洗剤製品の販売を開始したことで、市民の合成洗剤問題への誤解はいっそう深刻の度を増しました。(日生協とは対照的に、生活クラブやグリーンコープなど、日生協との関わりが薄く、独立的スタンスを保つ生協連は、生協の枠を越えて協同で、合成洗剤追放・石けん普及推進の方針を堅持しています。)グローバル展開するP&G社は、化学物質規制の厳しいEUなどの地域では、洗剤成分としてのLAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩)自粛の動きがみられる一方で、化学物質規制が緩慢な日本や中国などでは、依然とし市民の目を欺いてLAS洗剤を押し売りし続ける動きがみられます。さらに、水生生物に対する催奇形性を理由に、他社に使用自粛の動きがみられるジンクピリチオンも、P&G製品には配合し続けるといったところにも、P&G社の市民性無視(市民運動敵視)の体質が垣間見られます。

さらにP&Gには、市民運動での合成洗剤批判のグレーなイメージを隠蔽すべく、自社Webサイトで「サステナビリティ」という語句を用いて、あたかも自社の事業活動がサステナビリティ面で貢献しているかのように錯覚させたり、学校教育の場面に介入し、環境汚染物質を含む製品のイメージ美化を図ったり、東日本大震災後には、自社製品を使った洗濯ボランティアで貢献しているといったCSR活動などで、市民的な印象を装うとする美化工作の動きもみられます。

最近の強香柔軟剤のブームは、アメリカP&G社のメキシコ製ダウニーがきっかけといわれています。従来は、日本では強香製品は受け入れられませんでしたが、P&G製品の影響で、何らかのきっかけでブームとなったのです。先に述べたマクドナルドの事例とよく似ています。そこにも、アメリカナイズの影響がみられます。最近では、柔軟剤などの強い臭気で健康被害を訴える事例が多発しており、消費生活センターに苦情が殺到するなど、大きな社会問題となっています。学校においても、強香が嫌いな児童・生徒に対する人権侵害の問題になっており、議論を呼んでいます。